Python3.10の新機能 Python 3.10の新機能(その6) 明示的な型エイリアス

(その1) パターンマッチ(その2) with文のネスト(その3) エラーメッセージの改善(その4) | 演算子によるユニオン型の指定(その5) パラメータ仕様変数(その6) 明示的な型エイリアス(その7) ユーザ定義型ガード(その8) OpenSSL 1.1.1が必須に(その9) zip()関数に引数 strict を追加(その10) Dataclassでslotsが利用可能に(その11) その他の変更

Python3.10で追加された型ヒント関連機能から、 PEP 613 Explicit Type Aliases を解説します。

型エイリアス

型エイリアスは、型定義に別名をつける機能です。

型エイリアスの定義は、見た目はただの代入文と区別が付きません。モジュールのトップレベルで型を代入すると、左辺の名前は右辺の型別名となります。

例として、

Username = str

と書けば、str 型の別名として、Username という型名を使えるようになります。

str型を使って

username: str = "test user"

と書いても、Username 型を使って

username: Username = "test user"

と書いても、まったく同じ型ヒントになります。

このように、代入文で型に別名をつけるのはPythonとしてごく普通の動作で、最初に型ヒントが登場したときには、静的な型チェッカでも同じ使い方をするのはわかりやすいと想定されていたのでしょう。

しかし、これだけでは単なる代入文と型エイリアスの区別がつかず、書き間違いがあってもわかりやすいエラーメッセージを表示するのが難しい場合があります。例えば、

def F()->None:pass

MyType1 = F

a: MyType1

というプログラムは、mypy で型チェックを行うと次のエラーとなります。

test.py:5: error: Variable "test.MyType1" is not valid as a type

このエラーは、MyType1 が有効な型の名前となっていないために発生します。

このプログラムを書いた人は、型エイリアスを定義するつもりで、

MyType1 = F

と書いたのでしょう。しかし、F は型ではなく関数オブジェクトなので、 MyType1 は型エイリアスの定義とはなりません。

それなのに

a: MyType1

と、変数 aMyType1 型と宣言しているので、この行でエラーが発生しています。

このエラーを解消するには、MyType1 = F の行を修正して、右辺に正しい型を指定する必要があります。本来、この行でエラーを発生して、開発者に間違ってますよ、と伝えるべきです。しかし、現在の仕様では、MyType1 = F が正しくない型エイリアスの定義とは認識できず、たんなる代入文でしかないため、この行ではエラーを出すのが困難です。

そこで、PEP 613 では typingモジュールに新しく TypeAlias を追加し、型エイリアスの として明示的に定義できるようになりました。

from typing import TypeAlias

def F()->None:pass

MyType1:TypeAlias = F

a: MyType1

このように記述すれば、mypyなどの型チェッカは TypeAliasF を指定していることを検出し、わかりやすくこの行でエラーを出力できるようになります。

前方参照

Pythonの型ヒントでは、まだ定義されていない型を参照するときには、文字列で型名を指定できます。

a: "SampleType"

class SampleType:
    pass

しかし、型エイリアスには、文字列を使った前方参照を指定できません。次のように型エイリアスを文字列で指定しても、エラーとなります。

MyType2 = "SampleType"

a: MyType2

class SampleType:
    pass

MyType2 に代入されているのは型ではなく文字列なため、型エイリアスの定義とは認められません。

この場合も、次のように TypeAlias を使って明示的に型エイリアスを定義すると

MyType2: TypeAlias = "SampleType"

型チェッカはMyType2が型エイリアスであることを理解して、型名として利用できるようになります。

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